意外に知らない ビタミンの話
(10)健康社会に役立つ
ビタミンは、人間は体内で作れないが、生命維持に不可欠な微量栄養素である。「なぜ作れない」。その宿命は進化の謎だ。
実際、ビタミンB1は細胞のエネルギー生産をサポートして疲労の改善や、脳神経の活動にもかかわるほど重要だが、人間は作れない。しかし、牛は4つある胃の1つにビタミンB1を作る細菌が巣くう。ちゃっかり細菌からビタミンB1を供給される形で共生している。
有毒な活性酸素の除去や、コラーゲンの生成にかかわるビタミンCについては人間など霊長類とモルモットが作れず、「犬や猫などの哺乳類が体内合成できるのになぜか」という疑問が深まる。
このように常に補給する必要があるビタミンの中でもビタミンB1は、日本人に多い脚気(かっけ)の予防・治療との関係で、効率良く吸収する方法が研究されてきた。
突破口を開いたのが藤原元典博士だ。京都大学医学部の講師だった藤原博士はビタミンB1を分解する酵素を調べていて、ニンニクのしぼり汁にビタミンB1を混ぜると、そのビタミンB1の姿がなくなり、体内で元のビタミンB1に復元されることに気付いた。
ニンニクの成分とビタミンB1が結合して新しい物質に変化していたのだ。しかも、吸収量が抜群に上昇した。1954年、医薬品ビタミンB1剤「アリナミン」の誕生である。
ビタミンは健常者であれば通常の食事で賄えるが、偏食や吸収率に個人差、年齢差があることから、潜在性欠乏症も増えているという。一方で、健康や病気に対する新たな作用も分かり、薬として使用される機会も多くなった。人間が作れないという宿命があるだけにビタミンの正確な知識が必要だ。=おわり
(取材協力・武田薬品工業)























