ビタミン発見100周年フォーラム
ビタミンを正しく摂っていきいき健康ライフ
12月13日は「ビタミンの日」。今年はビタミンが日本人によって発見されてから100周年にあたり、これを記念したフォーラム「ビタミンを正しく摂(と)っていきいき健康ライフ」が東京、大阪、名古屋の3都市で開催された。どの会場でも健康に関心の高い中高年が熱心に聞き入っていた。11月30日に東京・大手町のサンケイプラザなどで行われたフォーラムの模様を報告する。
基調講演「ビタミンの特徴と働き-明日の健康長寿のために-」
ビタミン・バイオファクター協会会長 京都大学名誉教授 岩井和夫氏
医薬品ビタミン剤で不足を補う
1910年12月13日に東京帝国大学の鈴木梅太郎博士が、米ぬかから脚気(かっけ)に効く物質を分離したことを発表しました。この物質が現在のビタミンB1にあたります。翌年、ポーランド人の学者・フンク博士が米ぬかから分離した成分を「Vital(生命に必要な)」と「amine(アミン)」から「ビタミン」と名付けました。これが世界に広まったのです。
現在、ビタミンは「微量で顕著な生理作用のある有機化合物で、人や高等動物が正常な生命活動を営むために摂取しなければならない栄養素」と定義されます。
近年は飽食の時代といわれるようにデパート、スーパー、コンビニで食品があふれかえっています。いろいろな加工食品や多彩な調理食品、それに世界各国のものも容易に入手できます。その半面、潜在的なビタミン欠乏症がしばしば見受けられるのも事実です。
健康を保つためにビタミンは身体に不可欠な栄養素です。毎日、一定量を摂取しなければなりません。しかし、種類によって働きが異なるので、すべてのビタミンについて必要量を十分に摂取するのは容易ではありません。
ビタミンは13種類あります。油に溶ける脂溶性ビタミンは、A、D、E、K。水に溶ける水溶性はB1、B6など8種類のビタミンB群とC。Aの欠乏で夜盲症。Dの欠乏で骨の異常。B1の欠乏で脚気。Cの欠乏で壊血病などの欠乏症を起こします。欠乏させないためには、1日当たりの必要量を知り、自分の食生活の1日当たりの摂取量を知ったうえで、不足しやすいビタミンを意識的にとることが望ましいのです。
厚生労働省が5年ごとに改定する「日本人の食事摂取基準」に年齢、性別による栄養素必要量が記載されています。ビタミンの必要量は、どのビタミンもタンパク質や脂質と比べると1000分の1から10万分の1のレベルです。高齢になると食事量が減り、腸管からの吸収力が低下するなど、ビタミンB群の摂取量が低くなりがちです。また、年齢とともに、肉よりも野菜中心の食事が好まれる傾向があります。一般にビタミンの含有量は野菜が多いと思われがちですが、B群のビタミンは実は肉や魚に多いのです。ビタミンB1は不足すると疲れやすくなってしまいます。
バランス良く、ビタミンを摂取しなければいけないと思い、肉や魚など色々な料理を多く食べすぎてカロリーオーバーになってしまい、生活習慣病になっては意味がありません。食材に含まれているビタミンの種類を理解して、不足するビタミンは医薬品ビタミン剤で補うのも賢明な方法です。また、ビタミンB1の吸収を高め、パワーアップした形のビタミンB1誘導体製剤など、効果が認められているものを選ぶことも大切です
このほか、大阪会場ではビタミン・バイオファクター協会業務執行理事で、京都大学名誉教授の左右田健次氏=写真=による、「生命の輝きとビタミン」、名古屋会場では、糸川教授による「ビタミンで予防する生活習慣病」と題した基調講演が行われた。
パネルディスカッション「意外と知らないビタミンの力」
【パネリスト】
ビタミン・バイオファクター協会参与 滋賀県立大学教授 柴田克己氏
坂の上の雲ミュージアム館長 松原正毅氏
産経新聞論説委員 坂口至徳
【コーディネーター】
フリーアナウンサー 酒井ゆきえ氏
■発見者は日本人
酒井ゆきえ氏(以下、酒井)「2010年はビタミンが発見されてから100周年。知っているようで知らないビタミンについて、さまざまな角度からお話を進めていきます。さて、ビタミンの発見者が日本人ということは世界的には認知されているのですか?」
柴田克己氏(以下、柴田)「残念ながら答えはノーです。ビタミンの最初の発見者は鈴木梅太郎博士だと長い間、認めませんでした。鈴木梅太郎博士は、日本人の体格を大きくする方策の研究中に、オリザニン(現在のビタミンB1)というものを発見された。単に脚気(かっけ)を治す成分を発見したのではなく、成長に必要な新しい栄養素を発見したと主張しました。翌年の、ポーランドの学者・フンクが同じ物質を『ビタミン』と命名した論文では、機能までは考えていません。この経緯から、私たちはビタミンの真の発見者は日本人であると主張しています」
■歴史に関わったビタミン
酒井「100年前は戦争があった時代です。ビタミンが戦争に影響を与えたことはあったんでしょうか」
松原正毅氏(以下、松原)「日本は明治という時代を迎え、近代国家の形成過程でロシアとの日露戦争になりました。ビタミン不足による病気が、この戦争に深く関わったと思います。日本側は脚気という病気で、日露戦争の時には兵隊の25万人が罹患し、3万人近くの人が亡くなりました。ロシア軍ではビタミンC不足による壊血病が広まったと言われています。
ただし、脚気は日本の海軍ではあまり広がらなかった。当時、原因がビタミンB1不足との知識は全くなかったのに、高木兼寛という海軍軍医が、白米ばかりを食べていたら脚気になると考え、海軍はパンと肉などの洋食、そして麦を混ぜた麦飯を食べさせるなどで脚気の予防に成功しました。一方、陸軍は脚気は病原菌で起こると信じ、できるだけ兵隊が当時好まれていた白米を食べられるようにしたので、日本軍の脚気患者のほとんどは陸軍でした。
司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』は、正岡子規、秋山好古・真之を含め、1300人あまりの人々の人生を克明に描くことで、日本における近代国家の形成過程を描いた小説です。司馬さんは第2巻のあとがきで、日露戦争はロシアが内側から崩壊したために拾い上げた、薄氷を踏むような勝利だった。日露戦争後、この冷厳な相対関係を、国民も国もジャーナリズムも、全く知ろうとしなかったと書いています。この、冷厳な相対関係を認識することが、一番大事だと思います。陸軍と海軍のビタミンを巡る対立も、冷静に認識していれば、脚気で死ぬこともなかった」
坂口至徳(以下、坂口)「数字を挙げると、陸軍では日露戦争の戦死者は4万7000人に対し、脚気による死者は2万7800人でした」
■疲れの原因にB1不足が
柴田「明治43(1910)年に鈴木博士が脚気はビタミン不足が原因と示し、その後も証拠がどんどん出ますが、決着がついたのは昭和元(1912)年です。それでも日本でなかなか浸透しませんでした。それに、ビタミンが発見されてもビタミンを活用する手段がなかった。太平洋戦争末期にはビタミンB1の構造式も分かり、化学合成もしていたのですが、一般の人がビタミンB1製剤を使うことはなかなかできませんでした。B1は疲れの改善など健康維持に必要な栄養素ですが、食事だけでは十分に必要量をまかなうことができない。ビタミンB1誘導体の製品化に成功するまで待たなければならなかったのです」
坂口「食べた炭水化物をエネルギーに変える際にいろいろな酵素が働きますが、ビタミンB1はそれを助ける潤滑油的な役割です」
柴田「ビタミン量は血液や尿で測定できます。血中濃度は問題ないが、尿中に出てくる量がゼロの人を潜在性欠乏症といい、これは、余裕のない状態です。このような人が同じ食生活を続けたまま、激しい運動をするなどの有事があるとビタミンB1消費量が増え、欠乏してしまいます。疲れの原因にはB1不足が大きく関わっています」
酒井「食事で上手に摂りたいのですが…」
柴田「医薬品ビタミン剤などをうまく使い、補給しましょう。自分の食生活を知って、不足するビタミンを知りましょう」
松原「私は先ほど、陸軍と海軍の話から人類の愚かさの話をしましたが、人類には賢い部分もある。ビタミンがここまで分かってきたというのは人類の賢さの側面ですし、栄養問題は最近になって人類社会の中で議論されている。その意味は大きいと思います」
柴田「中高年の方はビタミンが不足しがちです。尿中のビタミン量を測ったところ、70歳以上の高齢者で、2割の人が潜在性欠乏というデータもあります。ビタミンB1の吸収を高めたB1誘導体を含む、医薬品ビタミン剤を活用することが、特にシニア世代によいことだと思います」
酒井「ビタミンは必要不可欠な栄養素だということが分かりました。バランスの取れた食生活とビタミン補給で、毎日を健康に過ごしていきましょう」
高齢者にB1が欠乏
ビタミン・バイオファクター協会 監事 京都大学名誉教授 糸川嘉則氏
高齢者は、食物からエネルギーを生み出すさいに必要なビタミンB1の欠乏が見られます。このことを確かめるため、私は70代前後の高齢者と20〜30代の若壮年層に医薬品ビタミン剤を投与して、どれだけの期間、体内に残るか調べる研究を行いました。ビタミン剤を4週間、投与したあと中止し、8日目に血液中のB1濃度を調べる方法です。
この結果、投与終了直後にはすべての年齢の男女で正常値(1ミリリットル当たり40ナノグラム、ナノは10億分の1)を超えました。ところが、中止後8日目では、高齢者の男女が正常値を下回ったのに対し、若壮年の男女は正常値を維持していました。明らかに高齢者の体内からB1が流出しているのです。原因は、高齢者が体内でB1を保持する細胞の受容体が弱まっていることなどが考えられます。高齢者には医薬品ビタミン剤を体調に応じて飲むなどの配慮が必要です。
厚生労働省の国民健康・栄養調査(平成19年)では、30歳〜49歳の働き盛りの年齢でもB1不足の傾向が見られます。以前、偏食が原因で、しばらく途絶えていた脚気の患者が出てきたことがありました。現在も、B1が多い玄米や肉類などを摂(と)り、栄養バランスを考えた食事が不可欠です。























